中原 中也

小詩論

此処に家がある。人が若し此の家を見て何等かの驚きをなしたとして、そこで此の家の出来具合を描写するとなら、その描写が如何に微細洩さずに行はれてをれ、それは読む人を退屈させるに違ひない。――人が驚けば、その驚きはひきつゞき何かを想はす筈だが、そして描写の労を採らせるに然るべき動機はそのひきつゞいた想ひであるべきなのだが。(断るが、茲でいふ想ひとは思惟的なのでもイメッヂでのでも宜しい。)

生きることは老の皺を呼ぶことになると同一の理で想ふことは想ふことゝしての皺を作す。

想ふことを想ふことは出来ないが想つたので出来た皺に就いては想ふことが出来る。

私は詩はこの皺に因るものと思つてゐる。

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