中原 中也

その頃の生活

暑中休暇が、もう終りに近かつた。私は休暇中の自分の予定が、まだ三分の一も出来てゐないことでヂリヂリしてゐた。それに一ヶ月余りといふものを寝て起きて食ふと言ふ全くその文字通りの日暮しのために、いつときも我慢し切れなくなつてゐた。

或日父は近頃にない早く、外来患者も病室の方も済まして、表の間の卓に頬肘を突いた儘、縁先の河鹿の鉢をヂツと瞶めてゐた。私はその父を見ると何か言つて見たくなつた。私は下らない刺戟でも欲しい程退屈を感じてゐたのだ。そして余り切望するでもないことでも引つ張り出すより他仕方なかつた。

「お父さん、今から近所に遊びに行つて来ますよ。」

「またそんなことをいふ。一度不可ないつたら不可ない。」

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