中原 中也
地上組織
私は全ての有機体の上に、無数に溢れる無機的現象を見る。それは私に、如何しても神を信ぜしめなくては置かない所以のものである。
人間にとつての偶然も神にとつては必然。運命は即ち、その必然の中に握られてあり、吾等の意志の能力は即ちその必然より人間にとつての偶然を取除いた余の、所謂必然、その範囲に於て可能である。
私が今仮りに神の全てを見知したとする。然し私はそれを表現することは出来ないのだ。何故と云つて神は絶対であり、私の表現は相対的に行はれるのみだからである。茲に於て、人は神の全てを知るとも宿命の軌道を壊つことは不可能である。天才者常に空威張りし、予言者嘆息するはまことに許容すべきのみ。然るに彼も亦神の手になれるもの、常に理想の方向へとのみ盲目なれど強き力もつ衝動と共に生く。
併し、辛じて詩人は神を感覚の範囲に於て歌ふ術を得るのだ。