中原 中也

Me Voilà

人がいかにもてなしてくれようとも、それがたゞ暖い色をした影に見え、自分が自分で疑はれるほど、淋しさの中に這入つた時、人よ憶ひ出さないか? かの、君が幼な時汽車で通りかゝつた小山の裾の、春雨に打たれてゐたどす黒い草の葉などを、また窓の下で打返してゐた海の波などを……

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実生活は論理的にやるべきだ! 実生活にあつて、意味のほか見ない人があつたら、その人は実生活以外にも世界を知つてゐる人だ。則ち科学でも芸術でもない、大事な一事を!

げにわれら死ぬ時に心の杖となるものがあるなら、ありし日がわれらの何かを慄はすかの何か! ――生を愛したといふことではないか?

青空文庫の作品カード