今井 邦子

雪解水

何をくよくよ川ばた柳、水の流れを見てくらす

此俗謠は誰の作で、いつの頃から市井の唄となつて流行しだしたかはまだ調べてみないが、よほどの苦勞人の作であらう。ここで歌はれてゐる水の流れといふのは人生の象徴にもなつてゐるので、そこで一種洒脱の人生觀をもうたひ得てゐるのであらう。

水の流れに就て方丈記の作者ならずとも、私などでさへ見ても見ても飽ない大きい魅力を藏してゐる。河は春夏秋冬、それぞれの趣あつておもしろく無限に私の心に觸れ來るのである。

先年私は用事があつて信州伊那を訪ひ、そのついでに彼の地の人々のすゝめに誘はれて天龍峽に遊んだのであつた。

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