菊池 寛

大力物語

一

昔、朝廷では毎年七月に相撲の節会が催された。日本全国から、代表的な力士を召された。昔の角力は、打つ蹴る投げるといったように、ほとんど格闘に近い乱暴なものであった。武内宿彌と当麻のくえはやとの勝負に近いものだ。

だから、国々から選ばれる力士も、その国で無双の強者だったのである。

ある時、越前の佐伯氏長が、その国の選手として相撲の節会に召されることになった。途中近江の国高島郡石橋を通っていると、川の水を汲んだ桶を頭にいただいて帰ってくる女がいた。

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