中里 介山
法然行伝
一
法然上人は美作の国、久米の南条稲岡庄の人である。父は久米の押領使、漆の時国、母は秦氏である。子の無いことを歎いて夫婦が心を一つにして仏神に祈りをした。母の秦氏が夢に剃刀を呑むと見て身ごもりをした。父の時国が云うのに、
お前が孕める処定めてこれは男の子であって一朝の戒師となる程の者に相違ないと。
母の秦氏は心が柔和で、身に苦しみがない。堅く酒肉五辛を断って三宝に帰する心が深かった。
中里 介山
一
法然上人は美作の国、久米の南条稲岡庄の人である。父は久米の押領使、漆の時国、母は秦氏である。子の無いことを歎いて夫婦が心を一つにして仏神に祈りをした。母の秦氏が夢に剃刀を呑むと見て身ごもりをした。父の時国が云うのに、
お前が孕める処定めてこれは男の子であって一朝の戒師となる程の者に相違ないと。
母の秦氏は心が柔和で、身に苦しみがない。堅く酒肉五辛を断って三宝に帰する心が深かった。