佐藤 垢石

早春の山女魚

豊満な肉をおおった青銀色の鱗の底に、正しく並んだ十三個の斑点が薄墨ぼかしの紫を刷いたように、滑らかな肌から泛び出て、その美しさは形容の言葉がない。かがやき透るような円らかな眼、スマートな姿、山女魚は何と清麗な魚であろう。

三月一日から、山女魚釣の解禁となる。

釣には、幾十幾百と種類はあろう。しかし山女魚釣ほど興味が深く、淡雅な環境を持つ釣は他にないと言える。もう、その清快な釣技に親しむ季節が眼の前へ迫って来た。

山女魚は、晩秋から初冬へかけて溪流の砂礫の間に産卵する。そして性の使命を果たし、窶れて、見るかげもなく痩せ細り、肌の色は黝んで肉はやわらかくなり、一種の臭みさえ生れてその当時は釣っても食べられないのである。

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