佐藤 垢石
冬の鯊釣
彼岸の鯊は中気の薬というが、まだその頃の鯊は形が小さく、肉も軟かく、味が上等とはいえません。
海に寒風が吹いて、釣姿に襟巻を必要とする時が来ると、鯊は大きく育って背の肉が盛り上るようになって食味をそそるのであります。三枚に下した天プラは誰でも愛賞し又カラ揚にして酢で食べれば実におつなものであります。だから家庭の御勝手を賑やかそうとする人は、冬の鯊釣に出掛けます。
冬の鯊釣を下釣といって、十一月の末頃になり野に一霜か二霜降りると、それまで海の浅い処の芥や藻の下、河口の砂の上に遊んでいた鯊は、水の冷えるのを避けて沖へ出で、五、六尋の処に落ち込みます。この季節の鯊は脂肪も充分に乗って来て、腹に卵を持ち、立派な姿となって居ります。
服装は寒さに堪えるだけの用意をして行かねばなりません。道具や餌は大抵船宿に用意してありますから、御弁当だけ持って行けばいい。婦人や子供達でも連れて行けば楽しい一日を暮らす事が出来ます。