泉 鏡花・泉 鏡太郎
鑑定
牛屋の手間取、牛切りの若いもの、一婦を娶る、と云ふのがはじまり。漸と女房にありついたは見つけものであるが、其の婦(奇醜)とある。たゞ醜いのさへ、奇醜は弱つた、何も醜を奇がるに當らぬ。
本文に謂つて曰く、蓬髮歴齒睇鼻深目、お互に熟字でだけお知己の、沈魚落雁閉月羞花の裏を行つて、これぢや縮毛の亂杭齒、鼻ひしやげの、どんぐり目で、面疱が一面、いや、其の色の黒い事、ばかりで無い。肩が頸より高く聳えて、俗に引傾りと云ふ代物、青ン膨れの腹大なる瓜の如しで、一尺餘りの棚ツ尻、剩へ跛は奈何。
これが又大のおめかしと來て、當世風の廂髮、白粉をべた/\塗る。見るもの、莫不辟易。豈それ辟易せざらんと欲するも得んや。
而して、而してである。件の牛切、朝から閉籠つて、友達づきあひも碌にせぬ。