泉 鏡花・泉 鏡太郎
廓そだち
古くから、人も知つた有名な引手茶屋。それが去年の吉原の火事で燒けて、假宅で營業をして居たが、續けて營業をするのには、建て復しをしなくてはならぬ。
金主を目付けたが、引手茶屋は、見込がないと云ふので、資本を下さない。
殊に、その引手茶屋には、丁度妙齡になる娘が一人あつて、それがその吉原に居るといふ事を、兼々非常に嫌つて居る。娘は町へ出度いと言ふ。
女房の料簡ぢやあ、廓外へ出て――それこそ新橋なぞは、近來吉原の者も大勢行つて居るから――彼處等へ行つて待合でもすれば、一番間違は無いと思つたのだが、此議は又その娘が大反對で、待合なんといふ家業は、厭だといふ殊勝な思慮。