泉 鏡花・泉 鏡太郎

祭のこと

いまも中六番町の魚屋へ行つて歸つた、家内の話だが、其家の女房が負ぶをして居る、誕生を濟ましたばかりの嬰兒に「みいちやん、お祭は、――お祭は。」と聞くと、小指の先ほどな、小さな鼻を撮んぢやあ、莞爾々々、鼻を撮んぢやあ莞爾々々する。

山王樣のお渡りの、猿田彦命の面を覺えたのである。

それから、「お獅子は? みいちやん。」と聞くと、引掛けて居る半纏の兩袖を引張つて、取つてはかぶり、取つてはかぶりしたさうである。いや、[#「いや、」は底本では「いや、、」]お祭は嬉しいものだ。

――今日は梅雨の雨が、朝から降つて薄ら寒い。……

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