シュニッツレル アルツール

みれん

一

黄昏時がもう近くなった。マリイはろは台に腰を掛てから彼此半時ばかりになる。最初の内は本を読んでいたが、しまいにはフェリックスの来るはずの方角に向いて、並木の外れを見ていたのである。それが今立ち上がった。こんなに長く待たせられた事はない、陽気が少し冷たくなった。そのくせ空気にはまだなんとなく五月の末の和かみがある。

アウガルテンの公園には、もうたんと人がいない。散歩をしている群は、今少しで締められるはずの門の方へ足を向けている。マリイが出口の近所まで来た時、やっとフェリックスが見えた。約束の時間より後れたくせに男はゆっくり歩いている。女と目と目を見合せてから、少しばかり足を早めたばかりである。女は立ち留まって、男の来るのを待っていた。女の不性気に差し伸べた手を男は微笑みながら握った。

「まあ、あなたこんなに遅くなるまでお為事をなさらなくてはならないの。」こう云った女の声は穏かな不平の調子であった。男は女の手先を右の肘に掛けさせて歩き出したが別に返事はしなかった。

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