小川 未明

赤い船

一

露子は、貧しい家に生まれました。村の小学校へ上がったとき、オルガンの音を聞いて、世の中には、こんないい音のするものがあるかと驚きました。それ以前には、こんないい音を聞いたことがなかったのです。

露子は、生まれつき音楽が好きとみえまして、先生が鳴らしなさるオルガンの音を聞きますと、身がふるいたつように思いました。そして、こんないい音のする器械は、だれが発明して、どこの国から、はじめてきたのだろうかと考えました。

ある日、露子は、先生に向かって、オルガンはどこの国からきたのでしょうか、と問いました。すると先生は、そのはじめは、外国からきたのだといわれました。外国というと、どこでしょうかと考えながら聞きますと、あの広い広い太平洋の波を越えて、そのあちらにある国からきたのだと先生はいわれました。

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