小川 未明

電信柱と妙な男

ある町に一人の妙な男が住んでいた。昼間はちっとも外に出ない。友人が誘いにきても、けっして外へは出なかった。病気だとか、用事があるとかいって、出ずにへやの中へ閉じこもっていた。夜になって人が寝静まってから、独りでぶらぶら外を歩くのが好きであった。

いつも夜の一時ごろから三時ごろの、だれも通らない町の中を、独りでぶらぶらと歩くのが好きであった。ある夜、男は、いつものように静かな寝静まった町の往来を歩いていると、雲突くばかりの大男が、あちらからのそりのそりと歩いてきた。見上げると二、三丈もあるかと思うような大男である。

「おまえはだれか?」と、妙な男は聞いた。

「おれは電信柱だ。」と、雲突くばかりの大男は、腰をかがめて小声でいった。

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