小川 未明

黒い旗物語

一

どこからともなく、爺と子供の二人の乞食が、ある北の方の港の町に入ってきました。

もう、ころは秋の末で、日にまし気候が寒くなって、太陽は南へと遠ざかって、照らす光が弱くなった時分であります。毎日のように渡り鳥は、ほばしらの林のように立った港の空をかすめて、暖かな国のある方へ慕ってゆきました。

爺は破れた帽子をかぶっていました。そして西洋の絵にある年とった牧羊者のように、白いあごひげがのびていました。子供は、やっと十か十一になったくらいの年ごろで、寒そうなふうをして爺の手を引いて町の中を歩きました。爺は胡弓を持って、とぼとぼと子供の後から従いました。

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