小川 未明
どこで笛吹く
一
ある田舎に光治という十二歳になる男の子がありました。光治は毎日村の小学校へいっていました。彼は、いたっておとなしい性質で、自分のほうからほかのものに手出しをしてけんかをしたり、悪口をいったりしたことがありません。けれど、どこの学校のどの級にでも、たいてい二、三人は、いじの悪い乱暴者がいるものです。
光治の級にも、やはり木島とか梅沢とか小山とかいう乱暴のいじ悪者がいて、いつも彼らはいっしょになって、自分らのいうことに従わないものをいじめたり、泣かせたりするのでありました。光治は日ごろから、遊びの時間にも、なるたけこれらの三人と顔を合わせないようにしていました。
学校の運動場には大きなさくらの木があって、きれいに花が咲きました。そして花の盛りには、教師も生徒も、その木の下にきて、遊び時間には遊びましたが、それもわずか四、五日の間で、風が吹いて、雨が降ると、花は洗い去られたように、こずえから散ってしまい、世はいつか夏になりました。そうなると、もはやこの木の下にきて遊ぶものがありません。