小川 未明

なくなった人形

冬でありましたけれど、その日は、風もなく穏やかで、日の光が暖かに、門口に当たっていましたので、おみよは学校から帰りますと、ござを敷いて、その上で、人形や、おもちゃなどを出してきて遊んでいました。すこし前まで、近所のお友だちがきて、いっしょに遊んでいたのですが、お友だちはちょっと用ができて家へいったので、後には、まったくおみよ一人となったのでした。けれども、彼女はすこしもさびしいとは思いません。かわいい人形がそばにありますから、それを抱いたり、下にすわらせたり、またそれにものをいったり、おもちゃのお膳や、茶わんや、さらなどに、こしらえたごちそうを入れて、供えてやったりしていますと、けっしてさびしくもなんともなかったのであります。

その人形は、今年の春、田舎から叔父さんが出てこられたときに、叔父さんといっしょに、町へいって買ってもらった、好きな、たいせつにしている人形でありました。

日は、だんだん西の方へまわりましたけれど、まだそこには、暖かな日が当たっていました。

「さあ、こんどはなにをおまえにこしらえてあげようかね。」と、おみよは人形に向かって、独り言をもらしたのです。

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