小川 未明

馬を殺したからす

北の海の方にすんでいたかもめは、ふとして思いたって南の方へと飛んできました。途中でにぎやかな街が下の方にあるのを見ました。そこにはおほりがあって、水がなみなみと青く、あふれるばかりでありましたから、しばらくそこへ下りて暮らしました。

この街は、この国の一番の都でありまして、人々はそのほりの中にすんでいる魚を捕ることができなく、また下りている鳥を撃つことができないおきてでありましたから、かもめには、このうえなく都合がよく、暮らしいいところでありました。

ほりの中にいる魚は、それは北の海にいる魚の味とは較べものになりません。どろ臭くて骨が堅うございましたけれど、容易に捕ることができましたので、荒波の上で、仕事するように骨をおらなくてすんだのであります。

かもめは、もうずっと南の方へいくという考えは捨ててしまいました。だいいち、人間というものが、ここにいても、すこしも怖ろしくありませんので、水もそのわりあいに暖かであるし、その年の冬は、この街の中で暮らそうと考えました。

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