小川 未明
おじいさんの家
一
学校から帰ると正雄は、ボンと楽しく遊びました。ボンはりこうな犬で、なんでも正雄のいうことはよく聞き分けました。ただものがいえないばかりでありましたから、正雄の姉さんも、お母さんも、みんながボンをかわいがりました。
ただ一つ困ることは、日が暮れてから、ボンがほえることであります。しかしこれは犬の役目で、夜中になにか足音がすればほえるのに不思議なことはありませんけれど、あまりよくほえますので近所で迷惑することであります。
「ボン、なぜそんなにおまえはほえるのだ。もう今夜からほえてはならんよ、ご近所で眠れないとおっしゃるじゃないか。」と、正雄のお母さんがおしかりになると、ボンは尾を振って、じっとりこうそうな目つきをして顔を見上げていましたが、やはり、夜になると、家の前を通る人の足音や、遠くの物音などを聞きつけて、あいかわらずほえたのであります。