小川 未明
角笛吹く子
町の四つ角に立って、一人の男の子がうろうろしていました。子供ははだしで、足の指を赤くしていましたけれど、それを苦にも感じないようでありました。短い黒い着物をきて、延びた頭髪は、はりねずみのように光っていました。
子供は、このあたりのものではないことはよくわかっています。前には、こんな子供がこの付近で遊んでいたのを、だれも、見たものがないのでありましょう。きっとどこかからやってきて、帰る途を迷ったにちがいありません。けれど、なかなかきかぬ気の子供は、それがために、けっして泣き出すようなことがなかったのです。
町には、もう雪がたいてい消えかかっていましたけれど、なおところどころに残っているのが見えました。子供は、車がいったり、きたりしますのを目を円くして、おびえながらながめていましたが、あまり自分に注意をする人もありませんので、やっと安心したように、いくらかおちついたらしいようすでありました。ちょうど山がらすが里に出てくると、里に棲んでいる、たくさんのからすに、たかっていじめられるように、子供には、町を通る人間が怖ろしかったのです。
だれも、自分に気を止めるものがないと知ると、子供は、そのそばにあった時計屋の店さきにゆきました。その店には、ガラス戸の内側に、宝石の入った指輪や、金時計や、銀の細工をしたえり飾りや、寒暖計や、いろいろなものが並べてありましたが、中にも、一つのおもしろい置き時計が目立っていました。