小川 未明

町のお姫さま

昔、あるところに、さびしいところの大好きなお姫さまがありました。どんなにさびしいところでもいいから人の住んでいない、さびしいところがあったら、そこへいって住みたいといわれました。

お供のものは、お姫さまのお言葉だからしかたがありません。人のだれも住んでいない、山の中にでも、お姫さまのゆかれるところへは、ついていかなければなりません。

人里を遠く離れた山の中へ、いよいよお姫さまは移ることになりました。そして、お供のものもついてゆきました。

お姫さまの、歌をうたわれる声はたいへんに、よいお声でありました。また、たいへんに鳴り物をならすことがお上手でありました。琴や、笛や、笙を鳴らすことの名人でありました。だから平常、歌をおうたいになり、鳴り物を鳴らしておいでなさるときは、けっして、さびしいということはなかったのであります。

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