小川 未明
くわの怒った話
あるところに、性質のちがった兄と弟がありました。父親は死ぬときに、自分の持っている圃を二人に分けてやりました。
兄はどちらかといえば、臆病で、働くことのきらいな人間でありましたが、弟は、どうかして自分の力で働いて、できるだけの仕事をしたいものだと、日ごろから思っていました。
いよいよ父親がなくなってしまいますと、二人は、これから自分で働いて、生活をしなければならなくなりました。あるときのこと、弟は兄に向かって、
「兄さん、私は、お父さんが分けてくだすった圃を売って、その金を持って旅に出て、なにか仕事をして働きたいと思いますが、兄さんはどうなさいますか。」といいました。