小川 未明
港に着いた黒んぼ
やっと、十ばかりになったかと思われるほどの、男の子が笛を吹いています。その笛は、ちょうど秋風が、枯れた木の葉を鳴らすように、哀れな音をたてるかと思うと、春のうららかな日に、緑の色の美しい、森の中でなく小鳥の声のように、かわいらしい音をたてていました。
その笛の音を聞いた人々は、だれがこんなに上手に、また哀れに笛を吹いているのかと思って、そのまわりに寄ってきました。するとそれは、十ばかりの男の子で、しかもその子供は、弱々しく見えたうえに、盲目であったのであります。
人々は、これを見て、ふたたびあっけにとられていました。
「なんという、不憫な子供だろう?」と、心に思わぬものはなかった。