小川 未明

いろいろな花

さまざまの草が、いろいろな運命をもってこの世に生まれてきました。それは、ちょうど人間の身の上と変わりがなかったのです。

広い野原の中に、紫色のすみれの花が咲きかけましたときは、まだ山の端に雪が白くかかっていました。春といっても、ほんの名ばかりであって、どこを見ても冬枯れのままの景色でありました。

すみれは、小鳥があちらの林の中で、さびしそうにないているのをききました。すみれは、おりおり寒い風に吹かれて、小さな体が凍えるようでありましたが、一日一日と、それでも雲の色が、だんだん明るくなって、その雲間からもれる日の光が野の上を暖かそうに照らすのを見ますと、うれしい気持ちがしました。

すみれは、毎朝、太陽が上るころから、日の暮れるころまで、そのいい小鳥のなき声をききました。

青空文庫の作品カード