小川 未明
宝石商
昔、北の寒い国に、珍しい宝石が、海からも、また山からもいろいろたくさんに取れました。
それは、北の国にばかりあって、南の方の国にはなかったのであります。南の方の暖かな国は富んでいましたから、この珍しい宝石を持って売りにゆけば、たいそう金がもうかったのでありました。
けれど、質樸な北の方の国の人々は、そのことを知りませんでした。また、遠い南の国へゆくにしても、幾日も幾日も旅をしなければならない。船に乗らなければならないし、また、車にも、馬にも乗らなければならなくて、容易のことではなかったのであります。
ここに、智慧のある男がありました。その男は、北の国のものでもなければ、また、南の国のものでもなかった。どこのものとも知れなかったのであります。