小川 未明

消えた美しい不思議なにじ

それは、ここからは見えないところです。

そこには黒い、黒い河が流れています。どうしたことか、その河の水は真っ黒でありました。河が真っ黒であったばかりでなく、河原の砂もまた真っ黒でありました。そして、その河は音もたてずに、また真っ黒な大きな森の中をくぐって、いずこともなく流れているのでありました。

空の色は、夜ともつかず、また昼ともつかずに、うす暗くぼんやりとしていました。ただ、ため息のように、風が吹いて、忍び足にどこへかいくのでありました。そして、そのところには、生き物というものは、なにひとつ動いている姿を見ることができませんでした。ただ河原を怪しげな女が歩いているばかりでありました。

いったい、この怪しげな女はなにものでありましょうか。年をとっているのか、また、そんなに年をとっていないのか、見ただけではわかりませんでした。顔も肩さきも、その長い真っ黒な髪の毛に隠れていてよく見ることができませんでした。

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