小川 未明
三匹のあり
川の辺に、一本の大きなくるみの木が立っていました。その下にありが巣を造りました。どちらを見まわしても、広々とした圃でありましたので、ありにとっては、大きな国であったにちがいありません。
ありには、ある年、たくさんな子供が生まれました。それらの子供のありは、だんだんあたりを遊びまわるようになりました。するとあるとき、それらの子ありのお母さんは、子供らに向かっていいました。
「おまえがたは、あのくるみの木に上ってもいいけれど、けっして、赤くなった葉につかまってはならぬぞ。いまは、ああしてどの葉を見ても、真っ青だけれど、やがて秋になると、あの葉が、みんなきれいに色がつく、そうなると危ないから、きっと葉の上にとまってはならぬぞ。」と、戒めたのでありました。
ある日のこと、五匹の子ありが外に遊んでいて、大きなくるみの木を見上げていました。