小川 未明
おおかみと人
未開な小さな村がありました。町へいくには、山のすそ野を通らなければなりませんでした。その間はかなり遠く三里もありまして、その間には、一軒の人家すらなかったのであります。
春から夏にかけては、まことに景色がようございましたけれども、秋の末から冬にかけては、まったくさびしゅうございました。けれど、その村の人は、町までいくには、どうしてもその高原を通らなければならなかったのです。
この辺には、おおかみがときどき出て、人間を食ったことがあります。また、きつねが出て、人をばかしたこともあります。冬になって雪が降ると、人々は、一人でこの路を通ることをおそれました。
村に猟人のおじいさんが住んでいました。このおじいさんは、長年猟人をしていまして、鉄砲を打つことの大名人でありました。どんな飛んでいる鳥も、走っているうさぎも、またくまや、おおかみのような猛獣も、たいてい的をつけたものは、そらさず一発で打ち止めるというほど上手でありました。