小川 未明
木に上った子供
あるところに、辰吉という少年がありました。辰吉は、小さな時分に、父や母に別れて、おばあさんの手で育てられました。
ほかの子供が、やさしいお母さんにかわいがられたり、姉さんや、兄さんにつれられて、遊びにいったりするのを見ると、辰吉は、自分ばかりは、どうして、独りぼっちなのであろうと悲しく思いました。
「おばあさん、僕のお母さんは、どうしたの?」と、辰吉は、おばあさんにたずねました。すると、おばあさんは、しわの寄った手で、辰吉の頭をなでながら、
「おまえのお母さんは、あっちへいってしまったのだ。」と答えました。