小川 未明

天下一品

ある日のことであります。男は空想にふけりました。

「ほんとうに、毎日働いても、つまらない話だ。大金持ちになれはしないし、また、これという安楽もされない。ばかばかしいことだ。よく世間には、小判の入った大瓶を掘り出したといううわさがあるが、俺も、なにかそんなようなものでも掘り出さなければ、大金持ちとはならないだろう。」と、その男は、いろいろなことを、仰向いて考えていました。

すると、たなの上に乗っていた、古い仏像に目が止まりました。昔から、家にあったので、こうしてたなの上に乗せておいたのです。仏壇の中には、あまり大きすぎて入らなかったからであります。

「あの仏像が、金であったら、たいへんな値打ちのものだろうが、どうせそんなものでないにはきまっている。それに手が欠けていて、どのみち、たいした代物ではない。しかし、あの仏像がいいものであって、値が高く売れたら、どんなにしあわせだろう。俺は、たくさんの田地を買うし、また、諸国を見物にも出かけるし、りっぱな着物も造ることができるだろう。」と、男は、黒くすすけた仏像を見ながら考えこんでいました。

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