小川 未明

ちょうと怒濤

美しいちょうがありました。

だれがいうとなく、この野原の中から、あまり遠方へゆかないがいい。ゆくと花がない、ということをききましたから、ちょうは、その野原の中を飛びまわっていました。

しかし、その野原は広うございましたので、毎日遊ぶのに、不自由を感じませんでした。自分ばかりでない、たくさんのほかのこちょうもいました。また、みつばちもいましたから、さびしいことはなかったのです。

野原には圃がありました。菜の花が咲いています。また、麦がしげっています。そのほか、えんどうの花や、いろいろの花が咲いていました。その花の上や、青葉の上を飛びまわっているだけでも、一日かかるのでありました。

青空文庫の作品カード