小川 未明

幸福に暮らした二人

南洋のあまり世界の人たちには知られていない島に住んでいる二人の土人が、難船から救われて、ある港に着いたときでありました。

砂の上に、二人の土人がうずくまってあたりの景色に見とれていました。その港はかなり開けたにぎやかな港でありましたから、華やかなふうをしたいろいろな人が歩いていました。またりっぱな建物も見られました。そして、あちらには、煙突から黒い煙が上がって、その煙は雲切れのした大空を沖の方へとなびいていました。

それから目に見るもの、また、耳に聞くもの、一つとしてこの二人の黒んぼの心を驚かさないものはなかったのです。二人はあちらに見える、白く塗った三階建ての家屋を見ましたときに、それがなんであるかすらもよくわからなかったのでした。しかし、自分たちと異った人間がそばの家々から顔を出してのぞいたり、またその中に動いたりしているようすなどを見ると、あちらの美しい建物の中には、もっと力の強い、偉い人間が住んでいるのだろうということを想像しました。それにつけても、こんな美しい街がどうしてできたものか、まただれによって、どうして美しく地上にいろいろなものが造られたのであるか、それを考えることすらが、二人にはできなかったのであります。

太陽の光は、故郷の土の上に照りつけるほど強烈ではなかった。そして、それだけ夢を見ているような、うっとりした気持ちにさせたのであります。二人はあの怖ろしいあらしの夜を怒濤にもまれて、真っ暗な中を漂っていたこと、また、夜が明けると、青い、青い、はてしもない海の上を、幾日も、幾日も漂っていたこと、そしてそのあげくに、見も知りもしない船に救われたこと、そして、いま

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