小川 未明
明るき世界へ
一 小さな芽
小さな木の芽が土を破って、やっと二、三寸ばかりの丈に伸びました。木の芽は、はじめて広い野原を見渡しました。大空を飛ぶ雲の影をながめました。そして、小鳥の鳴き声を聞いたのであります。(ああ、これが世の中というものであるか。)と考えました。
どれほど、この世の中へ出ることを願ったであろう。あの堅い土の下にくぐっている時分には、同じような種子はいくつもあった。そして、暗い土の中で、みんなはいろいろのことを語り合ったものだ。
「早く、明るい世の中へ出たいのだが、みんながいっしょに出られるだろうか。」と、一つの種子がいうと、