小川 未明

黒い人と赤いそり

はるか、北の方の国にあった、不思議な話であります。

ある日のこと、その国の男の人たちが氷の上で、なにか忙しそうに働いていました。冬になると、海の上までが一面に氷で張りつめられてしまうのでした。だから、どんなに寒いかということも想像されるでありましょう。

夜になると、地球の北のはてであったから、空までが、頭の上に近く迫って見えて、星の輝きまでが、ほかのところから見るよりは、ずっと光も強く、大きく見えるのでありました。その星の光が寒い晩には凍って、青い空の下に、幾筋かの銀の棒のように、にじんでいるのが見られたのです。木立は音を立てて凍て割れますし、海の水は、いつのまにか、動かなくとぎすました鉄のように凍ってしまったのであります。

そんなに、寒い国でありましたから、みんなは、黒い獣の毛皮を着て、働いていました。ちょうど、そのとき、海の上は曇って、あちらは灰色にどんよりとしていました。

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