葛西 善蔵
哀しき父
一
彼はまたいつとなくだん/\と場末へ追ひ込まれてゐた。
四月の末であつた。空にはもや/\と靄のやうな雲がつまつて、日光がチカ/\櫻の青葉に降りそゝいで、雀の子がヂユク/\啼きくさつてゐた。どこかで朝から晩まで地形ならしのヤートコセが始まつてゐた……。
彼は疲れて、青い顏をして、眼色は病んだ獸のやうに鈍く光つてゐる。不眠の夜が續く。ぢつとしてゐても動悸がひどく感じられて鎭めようとすると、尚ほ襲はれたやうに激しくなつて行くのであつた。
葛西 善蔵
一
彼はまたいつとなくだん/\と場末へ追ひ込まれてゐた。
四月の末であつた。空にはもや/\と靄のやうな雲がつまつて、日光がチカ/\櫻の青葉に降りそゝいで、雀の子がヂユク/\啼きくさつてゐた。どこかで朝から晩まで地形ならしのヤートコセが始まつてゐた……。
彼は疲れて、青い顏をして、眼色は病んだ獸のやうに鈍く光つてゐる。不眠の夜が續く。ぢつとしてゐても動悸がひどく感じられて鎭めようとすると、尚ほ襲はれたやうに激しくなつて行くのであつた。