上司 小剣

父の婚礼

一

父の婚禮といふものを見たのは、決して自分ばかりではない。それは繼母といふものを有つた人々の、よく知つてゐることである。

曾て、クロポトキンの自傳を讀んだ時、まだ二十とはページを切らぬところに、父の婚禮を見ることが書いてあつたことを覺えてゐる。

……母が死んでから、父はもうそろ/\其の眼を世間の若い美しい娘たちの上に投げた。――といふやうなことが、あの黄色い假表紙の本の初めの方にあつたと思ふ。父の第二の婚禮の折の、子としての寂しさ、悲しさも書いてあつたであらう。いや確かに書いてあつた。

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