外村 繁
夢幻泡影
一
浅黄色の色硝子を張ったような空の色だった。散り雲一つない、ほとんど濃淡さえもない、青一色の透明さで、かえって何か信じられないような美しさである。例えば、ちょっと石を投げる、というような些細な出来事で、一瞬どんな変化が起るかも知れない、と危ぶまれるような美しさだった。そのとき、私には大空を落下する無数の青い破片を想像することもできた。
しかも、そんな美しさは、時も、空間も、失なわれてしまったような静かさの中にあった。それがかえって私を、不意に激しい不安に陥れたのかもしれない。
妻は隣室で眠り続けている。そう思ったとき、やっと時計の音が、私の耳に返って来た。