チェーホフ アントン

富籤

イワン・ドミートリッチは中流階級の人間で、家族と一緒に年に千二百ルーブルの収入で暮らして、自分の運命に大いに満足を感じている男であった。或る晩のこと夜食のあとで、彼は長椅子の上で新聞を読みはじめた。

「私、今日はうっかりして新聞も見なかったのよ」と彼の細君が、食器のあと片附けをしながら言った。

「当り籤が出てないか、ちょっと見て下さいな。」

「ああ、出てるよ」とイワン・ドミートリッチは言った、「だけど、お前の富札は質流れになってるんじゃないのかい?」

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