チェーホフ アントン

カシタンカ

一 行儀がわるい

まるできつねみたいな顔つきをした一匹の若い赤犬が――この犬は、足の短い猟犬と番犬とのあいのこだが――歩道の上を小走りに行ったりきたりしながら、不安そうにあたりをきょろきょろ見まわしていた。赤犬は、ときどき立ちどまっては、泣きながら、こごえた足をかわるがわる持ちあげて、どうしてこう道にまようようなへまなことをしでかしたんだろうと一生けんめい考えた。

赤犬は、自分がどんなふうに、きょう一日を暮らし、どうして、しまいにこの見知らぬ歩道へまよいこんだのか、はっきりおぼえていた。

たしか、きょうが始まったのは、主人のさしもの師ルカー・アレクサンドルィチが、帽子をかぶり、赤い布切れに包んだ、何か木製品をこわきにかかえて、――

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