チェーホフ アントン
大ヴォローヂャと小ヴォローヂャ
「ね、馭者をやって見てもいいでしょう。私、馭者のとこへ行くわ!」とソフィヤ・リヴォヴナが声高に言った、「馭者さん、待ってよ。私、あんたの隣へ行くから。」
彼女が橇の中で起ちあがると、夫のヴラヂーミル・ニキートイチと、幼な友だちのヴラヂーミル・ミハイルイチとは、倒れぬように彼女の腕を支えた。トロイカは疾走している。
「だから、コニャックを飲ませてはいけないと言ったじゃないか」とヴラヂーミル・ニキートイチが連れの耳に忌々し気にささやいた、「本当に君は何という男だ!」
大佐はこれまでの経験で、自分の妻のソフィヤ・リヴォヴナのような女が、少し酔い加減ではしゃぎ廻った挙句は、きっとヒステリックに笑い出し、それから泣き出すものなことを知っていた。家へ帰っても寝るどころか、湿布だ水薬だと騒がなければなるまいと、心配であった。