小川 未明

うずめられた鏡

後になってから、烏帽子岳という名がついたけれど、むかしは、ただ三角形の山としか、知られていませんでした。山がはじめて、地上に生まれたとき、あたりは、荒涼として、なにも、目にとまるものがなかったのです。

そのとき、はるか北の方に、紫色の光る海が見えました。

「あれは、なんだろう。」と、山は思いました。この大自然について、なにも知らなかった山は、日が出て、やがて日の暮れるまでの間に、いくたびとなく、かわる海の色を見て、ふしぎに感じたのです。しかし、からだのうごかされぬ山は、ただ、いろいろと、自然を空想するばかりでした。

「どうすれば、あすこに、いくことができるだろうか。」

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