小川 未明
丘の下
年雄は、丘の上に立って、ぼんやりと考えていました。
「学校で、みんなと別れるときは悲しかった。先生にごあいさつをすると、先生は、みんなに向かって、こんど年雄くんは、お父さんが転勤なさるので、遠くへいかれることになったから、よくお別れをなさいとおっしゃったのだ。みんなは、僕に手紙をくれよといって、所番地を紙片に書いて僕のポケットの中へ入れてくれたっけ。しかし、住所だけで、名を書いてないものは、だれだかわからないのだ。きっと、顔を知っているから、そのときは、いいと思ったのだろう。」
仲よく遊んだ、友だちの顔が、一人、一人、はっきりと目に映ったのでありました。
それは、ちょうど夏のはじめであったが、いまは、はや秋も末になっていました。あちらは、じき雪の降るころであろう。年雄は、北の遠い地平線をながめました。あの雲の漂っている下に、自分のなつかしい学校があるのだ。いまごろ、みんなは、どうしているだろうかと思ったのです。