小川 未明
風はささやく
高窓の障子の破れ穴に、風があたると、ブー、ブーといって、鳴りました。もう冬が近づいていたので、いつも空は暗かったのです。まだ幼年の彼は、この音をはるかの荒い北海をいく、汽船の笛とも聞きました。家から外へ飛び出して、独り往来に立っていると、風が、彼の耳もとへ、
「明日は、いいことがある。」と、ささやきました。
「そうだ、きっとお父さんが、明日帰っていらっしゃるのだ。」
彼は、希望を持って、明るくその一日を過ごすのです。
小川 未明
高窓の障子の破れ穴に、風があたると、ブー、ブーといって、鳴りました。もう冬が近づいていたので、いつも空は暗かったのです。まだ幼年の彼は、この音をはるかの荒い北海をいく、汽船の笛とも聞きました。家から外へ飛び出して、独り往来に立っていると、風が、彼の耳もとへ、
「明日は、いいことがある。」と、ささやきました。
「そうだ、きっとお父さんが、明日帰っていらっしゃるのだ。」
彼は、希望を持って、明るくその一日を過ごすのです。