小川 未明
心の芽
ある日、どこからか、きれいな鳥が飛んできて、木にとまりました。腹のあたりは黄色く、頭が紅く、長い尾がありました。野鳥のように、すばしこくなく、人間になれているらしく見えるのは、たぶん飼われていたのが、かごを逃げ出したのかもしれません。
みんなが、大騒ぎをしました。大人も、子供も、どうしたら捕らえられようかと、木の近くへ集まりました。正吉は、胸がどきどきして、自分が捕らえようと、心にきめると、みんなにむかって、
「あの鳥は、おれのものだ。わあわあいっちゃいけない。」といって、彼は、すぐ鳥のとまっているかきの木に登りはじめました。
鳥は、そんなことにまったく気づかず、さものんきそうに、あちこちと景色をながめていました。見ている人たちの中には、うまくつかまればいいがと思ったり、あるいは、早く逃げればいいのにと思ったり、てんでになにか考えていたであろうが、とにかくだまって、正吉のすることを見まもっていたのです。