小川 未明
少女と老兵士
某幼稚園では、こんど陸軍病院へ傷痍軍人たちをおみまいにいくことになりましたので、このあいだから幼い生徒らは、歌のけいこや、バイオリンの練習に余念がなかったのです。きょうも、「父よあなたは、強かった」を、バイオリンを弾くものと、うたうものとで調子を合わせたのでありました。
「よくできました。これでおしまいにしましょうね。あしたは、お国のために、負傷をなさった、兵隊さんたちをおみまいにまいるのですよ。」と、女の先生がいいました。
門から流れ出る生徒らを、二人の若い保姆が、たがいに十五、六人ずつ引きつれて、いつものごとく、道を左右に、途中まで見送ったのであります。
「ああ、わたしくたびれたわ。先生、おんぶしてちょうだい。」と、白い帽子を被った、一人の女の子が、お姉さんにでもねだるように、保姆さんに、いいました。