小川 未明
少年の日二景
おどろき
池の中には、黄色なすいれんが咲いていました。金魚の赤い姿が、水の上に浮いたりまるい葉蔭に隠れたりしていました。そして、池のあたりには、しだが茂り、ところどころ石などが置いてありました。
勇ちゃんは、いかにも金魚たちが楽しそうに遊んでいるのをぼんやりながめていました。そのとき、やぶの方から垣根をくぐって、黒い一筋の糸のように、なにか走ってきたので、その方を見ると、大きなへびが、一ぴきのかえるを追いかけているのです。かえるは、いまにもへびに捕らえられようとしました。勇ちゃんは、考える暇もなく、庭先へ飛び降りて、へびをなぐろうと思って、太い棒を取り上げたのです。この間にかえるは、縁の下へ入ろうとしました。しかしへびは執念深く逃がすまいとしました。
勇ちゃんは、力いっぱいたたきました。あわてていたので、棒はへびにあたらずに、強く地面をたたきました。するとへびは、かま首を上げて、勇ちゃんをにらみました。勇ちゃんは、なんだか怖ろしい気がしたが、こうなっては、かえってどうにかしなければならぬという気が起こって、また力を入れてたたきました。