小川 未明

武ちゃんと昔話

この夏休みに、武ちゃんが、叔父さんの村へいったときのことであります。

ある日、村はずれまで散歩すると、そこに大きな屋敷があって、お城かなどのように、土塀がめぐらしてありました。そして、雨風にさらされて古くなった門が、しめきったままになって、内には、人が住んでいるとは思われませんでした。

「どうしたんだろうか。」と、武ちゃんは、不思議に思いました。門のすきまからのぞくと、家のほかに土蔵もあったけれど、ところどころ壁板がはずれて、修繕するでもなく、竹林の下には、枯れ葉がうずたかくなって、掃くものもないとみえました。あたりは、しんとして、ただすずめの鳴き声が、きこえるばかりです。

「この家の人は、どこへいったんだろう?」

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