小川 未明
小さなねじ
おじいさんは、朝起きると、火鉢に当たりながら、もうそのころ配達されている新聞をごらんになっています。これは、毎朝のことでありました。
今日も、早く起きて火鉢の前にすわっていられました。外ではうぐいすの声がしていました。
「だいぶ春らしくなったな。この分では、もうじきに桜の花が咲くだろう。」と、独り言をしながら、眼鏡をかけ直して、新聞をひろげていられました。おじいさんは、お年のせいで、眼鏡がなくては、すこしも新聞がお読めになれないのでありました。そのうちに、おじいさんは、急にあわてて、眼鏡をはずして、手であたりをなでまわしながら、なにかさがしていられました。
「おじいさん、どうなさったのですか?」と、正二のお母さんが、これを見て、おききなさいました。