小川 未明
山に雪光る
いろいろの店にまじって、一けんの筆屋がありました。おじいさんが、店先にすわって太い筆や、細い筆をつくっていました。でき上がった筆は、他へおろしうりにうるのもあれば、また自分の店において、お客へうるのもありました。昔とちがい、このごろは、鉛筆や万年筆をつかうことが多く、筆をつかうことはすくなかったのです。しかし、大きな字を書いたり、お習字をしたりするときは、筆をつかうのでした。
武男は、よくおじいさんのところへ遊びにきて、お仕事をなさるそばで、おじいさんから、お話をきくのを楽しみとしました。
「おじいさん、あの字は、だれが書いたの。」と、頭の上にかかっている額をさしました。
「ああ、あれはここへみえる、書家の方が、お書きなされたのだ。」